Travel−−−なぜ旅に出るのか
はじめに

 

 

海外旅行のために仕事をしている!
と時折、私は豪語する。
ちょっぴり大げさだが、嘘ではない。
仕事をするのは生きていく為なのだが、それだけではなんとも味気ない。
「TRAVEL」はつまり、私にとってのニンジンであり、ビタミンなのだ。

旅行が大好きだった父に連れられて、我が家はよく家族旅行をしていた。
こどもの頃、グズな私は父にしょっちゅう「早くせんか!」と
旅先で怒られるのが憂うつで、イヤイヤついて行っていた。

自分で貯めたアルバイト料で友達と行くことを覚えてから、
「旅って怒られないものなんだ!」と自由さを知り、虜になった。

でも、年を重ねるにつれ家族旅行での思い出が
陽だまりのように暖かい。

何故、旅をするのか改めて考えてみる。
毎日の生活では1週間前のことはおろか、3日前のことさえ思い出せないのに、
旅は何年前のことでも、そこだけ切り取られた時間のように存在している。

その非日常な時間を、日常とは別に自分の中で保管していて、
ある時、何かの瞬間よみがえる。
たとえば、ブラウン管から。
なにげなくめくった雑誌から。
そうすると、その土地の空気や香りの“かけら”が一瞬、
キラキラと輝きながら舞い戻り、日常を忘れることができる。

それが現実逃避かというと、そうでもない。

事実、私と同じく旅行大好きの息子は、
「家に帰って来た日の夜、自分のベッドで足をバタバタっとすると
ああ、やっぱりこのベッドが一番だ〜!と思うんだ。だから旅行に行きたい。」と言う。

ある時、私も真似してこっそりバタバタさせてみた。
そうしたら、本当に幸せな気分になったのだ。
いつもは、ただ寝るだけの道具が、急にありがたいものに思えてくる。

海外に行くのも同じかもしれない。
旅行中はすごくエキサイティングで楽しいのに、戻ってくると
「やっぱり日本が一番いいよ〜!」と心から思う。

つまり空気と化した日常を、
「絶対的に必要な、感謝すべき存在として見直す機会にする」
というのが私の旅にでる理由のひとつのようだ。

離れたところから眺めてこそ、見えてくる風景もたくさんあるのだ。

日本にもまだまだ訪れてみたい場所がたくさんある。
でも、それはもう少し先の楽しみにとっておいて、
しばしの間、息子と2人分の旅費を貯めるということを張り合いとしていくつもり。

そうしていつの日か、彼が人生のピンチや孤独と向き合わなければ
ならなくなった時、陽だまりのような思い出をぽかぽかと暖めてくれたら
生きていく力が少し、湧き上がってくるのではないだろうか。

そんなことを心の片隅に願いつつ、また旅に出よう。

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